地域とともに歩む施設づくり… こッからCOLOR 社会福祉法人こぶしの会

こぶし通信 59号 2024年4月発行

2024/05/13 こぶし通信

権利を守り、保障するということの今
~奈良教育大学附属小学校問題と障害者福祉の報酬改定から考える~

社会福祉法人こぶしの会 理事長 坂下伸一

奈良教育大学附属小学校問題

 テレビや新聞で報道されている「奈良教育大学附属小学問題」を知っておられるでしょうか。私は、こぶしの会に来るまで、長く奈良教育大学附属小学校に勤めていました。最後の6年間は、副校長(教頭)をしていました。ですから、この問題が報道された時は、驚きと同時に、自分自身のしてきたことを否定された思いがし、悲しくなりました。

 1月17日に行われた大学の記者会見によると「学習指導要領通り行わない法令違反があったこと、教員が校長の命令を聞かない不適切な教員がいたこと、教科書を使っていないことなど」が問題点として指摘されていました。そして、その後、大学から附属小学校教員の多くを本人の同意なしに出向させるという話がでるに至り、一層の混乱を招くという状況になってしまいました。

 学習指導要領のあり方や教科書使用については、個人それぞれの考え方によって、意見が分かれるところです。しかし、不適切な教員がいること、その教員を研修させるという名目で出向させるということには、とうてい同意できません。私自身の経験からして、校長を無視したことなどなく、校長も含め、教員全体で合意して、何事も進めていたからです。

 私が今回の「奈良教育大学附属小学校問題」で一番言いたいことは、こうした混乱の犠牲になっているのが、子どもたちだということです。学級の先生が、何か間違ったことをしている。来年度から、急に居なくなるというような大人の世界の出来事に巻き込まれていることです。この問題をめぐっては、一方的に「批判」や「不適切」と決めつけるのではなく、子どもにとって、どういった学習を保障することが必要なのかを、みんなで話し合って決めていくことが大切ではないでしょうか。子どもを悲しませないで、学ぶ権利(学習権)を守っていくことこそ大切にしなければならないと思います。

障害者福祉の報酬改定

 今年4月から障害者福祉の報酬が改定されます。私たちこぶしの会は、国から支出されるこの報酬で運営されています。ですから、報酬改定は、こぶしの会の運営や仲間との実践に大きな影響がでます。報酬が下がれば、運営が苦しくなります。働く職員のみなさんの給料を上げることができなくなります。仲間にも影響します。

 今回の報酬改定では、全体としては、少し増額となっています。その他、食事提供体制加算(給食費に補助金を出す制度)について、厚労省は「自分で食べる昼食代に補助を出すのはどうか」という考え方に基づき、加算をなくす方向で検討されてきました。しかし、私たちの要望が実って残ることになりました。次回はどうなるかわかりませんが……。

 今回の改定で、一番問題となっているのは、生活介護事業所(こッから)報酬の実質的な切り下げです。これまでも、仲間が生活介護事業所に居る時間によって、報酬を決めているところもありましたが、時間をより細分化することで、報酬削減をねらっています。こッからでは、仲間は基本的に6時間~7時間いることになっていますが、これで計算すると、数百万円の収入減になってしまいます。こうした状況では、仲間たちの生活を支えることができなくなってしまいます。よく働いてくれている職員に、一層労働強化を押し付けることになりかねません。これでは、障害のある仲間が持っている他の人たちと同じように幸せに生きる権利を守ることができなくなってしまいます。

 2つの出来事から、障害のある人の生きる権利や子どもの学ぶ権利を守り、保障することが危うくなっていることを述べました。それだけでなく、日本の現状は、多くのところで、権利侵害が起こっているように思えてなりません。今こそ、あらゆる分野の人たちと手をつなぎ、一緒に考え合うことが、障害のある人の権利を守り、保障することに繋がるのではないでしょうか。

「こぶし通信」の詳細は下記のPDFファイルをクリック

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