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こぶし通信 54号 2021年12月発行
仲間理解と支援の充実を
社会福祉法人こぶしの会 理事長 坂下伸一
これまでも、これからも、障害者福祉施設の職員にとって、仲間の理解や支援上の苦労や困難は尽きることがありません。
「仲間同士の関係がうまく行かない時がある。どうしてあげたらいいだろうか」
「どうして同じことばかり繰り返すのだろうか。その度やさしく話しているのだが」
など……。
こぶしの会は、新しい職員も増えてきています。これまで培ってきたこぶしの会の理念や仲間支援のあり方が、上手く伝わっていない面もあります。職員間のコミュニケーションを広げ、職員を育てていくことを重視しなければならない時期に来ています。
そこで、今、こぶしの会は、研修はもちろんのこと、職員が仲間のことを理解したり、支援のあり方を考え合ったりするための職員同士の話合い、「ケース会議」や「事例検討会」と言われるものを大切にしていこうとしています。
◆仲間をいとおしく思うことから
「ケース会議」で話し合ったからといって、解決できないことも多いですが、仲間一人一人のことをじっくり話し合う事で、それまでは見えていなかった仲間の優しさや楽しそうな姿が見え、仲間がいとおしくなり、ほんわかした気持ちになることがあります。このことが、仲間の理解や支援の基礎になっているように思えてなりません。難しい話し合いではなく、仲間の姿を出し合いながら、仲間をいとおしく思い、ほんわかとした気持ちになることから、仲間の理解や支援が始まるように思います。
◆共感的自己肯定感を育む
仲間たち自身の思いや悩みも、たくさん話されます。
「どうせみんなから好かれていない。毎日の生活が面白くない」
「自分の顔や姿が好きになれない。何とかしたい」
「してはいけないと思っているのだが、がまんできない」
など……。
仲間たちは、総じて「自分自身を受け入れ、自分の価値を認める感覚・自己肯定感」が育っていないように感じます。ただし、周りの人に打ち勝って、他人より自分が素晴らしいと満足する「競争的自己肯定感」ではなく、自分の弱いところや失敗したことも受け入れ、自己のかけがえのなさに基づく「共感的自己肯定感」を育てていくことが大事にされなければなりません。仲間に「共感的自己肯定感」が育つように支援していくことが、何よりも求められているといえます。
◆家族の願いや思いを聞き取る
仲間のことを理解し支援するためには、仲間の育ちや家庭での様子を知ることが大切になるということもよく話題になります。家族が仲間をどのように育て、どのような様子であったか。また、家ではどのように過ごしているのかなど、仲間の育ちや今をしっかり聞き取ることが、仲間の理解や支援の手掛かりになることが少なくありません。
このように家族から話を聞くことは、単なる手掛かりに止まらず、家族の苦労や仲間への思いや願い、期待などを聞くことに繋がり、職員の中に家族への共感がうまれることになります。そして、そのことは、障害のある人に関わる職員にとって、支援への力に繋がっていきます。
◆制度改正も~多くの人と手をつないで~
話し合いの中で、どうにもできないことがあることも分かります。
「もう一人職員がいたら、仲間の支援が充実するのに」
「仲間が落ち着いて、ゆったり過ごせるような部屋があれば」
など……。
日本の障害者福祉制度の貧困さや課題が大きな壁になっています。これらのことは、こぶしの会とその職員の努力だけではどうにもならないことです。この通信を読んでくださっている後援会員のみなさんはもちろん、多くの人と手をつなぎながら、制度の改善や充実を求めていかなくてはならないです。
◆こぶしの会20周年記念事業へ
さて、こぶしの会は、今年で設立20周年を迎えています。コロナ過の中で、記念事業については、時期を遅らせて取り組むことにしています。新型コロナ感染症が収束することを願いながら、来年度中には、こぶしの会の未来につながるような記念行事や冊子づくりを行う予定です。そしてそれは、仲間の理解や支援と切り離して進むものではありません。これからも、こぶしの会として一層充実させていきたいと考えています。
(2021年12月記)