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こぶし通信 52号 2021年1月発行
原点にたち戻って
~新型コロナウイルス感染拡大の下で~
社会福祉法人こぶしの会 理事長 坂下伸一
昨年2020年は、新型コロナウイルスで始まり、新型コロナウイルスで終わったと言って過言ではない年でした。そして、今もそれは続いています。
こぶしの会もコロナウイルスに振りまわされた一年でした。一ヶ月におよぶ休所、後援会・家族会総会やつながり祭、こッから祭等の行事中止…。また、感染対策・対応やそのためのマニュアルづくり、そして何よりも寂しいことは、感染拡大のために、通所できない仲間がいることです。ただし、これは、本人や家族の問題ではありません。通所する上での心配や不安は、よく理解できるものだといえます。
困難な中で大切にしたいこと
感染拡大という困難な中で、私たちが、今一番大切にしなければならないことの一つは、こぶしの会の設立時や現在進めていることの原点にたち戻り、その意味を確認し、これからの法人運営や取組みに生かしていくことではないかと思います。
こぶしの会が大事にしてきた原点には「どんな障害があっても働くことができる。ぼくも働きたいんだ」「障害があっても、自分で選ぶことができるくらしを」などがあります。
「どんな障害があっても働けるのだ」という原点
ここでは、藤井克徳・星川安之著「障害者とともに働く」(岩波ジュニア新書)を参考にして、障害のある人が働くということについて、考えてみます。
障害があろうとなかろうと、働くことは日本国憲法27条で保障されている権利であることは言うまでもありません。その上で、新書の中では、「人がなぜ働くのか」について、次の4つの視点から書かれています。
・生活の糧を得ること
・生きがいや働きがいを得て、自分らしさを発揮すること
・社会とつながること
・健康の維持や生活リズムを確立すること
この視点から考えると、障害のある人が働くことにどのような意味があるのでしょうか。こぶしの会の仲間からみてみましょう。
Aさん「今日は給料日や、ウフ…」と満面の笑み。
職員 「何か買うの?」
Aさん「ないしょ」
給料日やボーナス日には、こうした会話が、必ず交わされます。本当にわずかな金額だけれど、自分で働き、自分のものを買う。お金を稼ぐという当たり前のことが、仲間にとって、大きな意味をもっているように思います・
仕事に取組んでいるBさんやCさんに声をかけると
Bさん「今日は、昼から販売に出かける。たくさん買ってくれる。お客さんが待ってはんねん」
Cさん「あと少しで、内職終わるねん。今日は、みんなしてしまわなあかん」
と、返事をしてくれます。
仕事の中で、役割を果たしたり、みんなの役に立ったりすることで、仲間に自信と誇りがうまれています。また、注文したり、買ってくれたりする人、他の人とつながっていると実感することができています。
Dさんは、なかなか通所できない、家に籠ってしまうことが少なくない仲間でし。自分の気持ちを立て直したいと思っていても、なかなかできないでいます。でも、Dさんが事業所にくると、仲間と一緒に仕事をして過ごすことができます。楽しそうな様子もみせてくれます。
通所し、働くことが仲間の中に生活リズムをつくり、生活を支える基本となっていきます。
このように、働くこと、ひとつとってみても、お金を稼ぐという意味だけでなく、仲間にとって、自分らしさを発揮することができ、生命と健康を支える基盤となっていると強く感じます。
新しい年、新たな取組みを
新型コロナウイルス感染が広がる中で、今まであたりまえであった日常が変化していくのではないかといわれます。しかし、だからこそ「障害のある人が働く」ということを含め、こぶしの会がこれまで大切にしてきた原点を改めて見つめなおし、新たな取組みを進めて行かなければならないのだと思います。
終わりになりましたが、あけましておめでとうございます。新しい年、「仲間を主人公に」という原点を踏まえ、法人運営に取組んでいきますので、引き続きご支援、ご協力をお願いします。